障子や木工製品の仕上げに欠かせない「カンナ」。今回は、建具職人・佐藤さんに、カンナの種類や使い分け、調整の仕方、さらには実際の削り方まで詳しく解説していただきました。
■そもそも「カンナ」とは?
カンナ(鉋)とは、木材の表面を削って滑らかに整えるための道具。大工さんは粗削りから仕上げまで幅広く使いますが、建具職人の世界では主に「仕上げ」や「微調整」に使用されます。
例えば、障子の部品同士の組み立て後の微妙な段差を整えたり、見た目を美しくするために使われるのがカンナです。
■主なカンナの種類と使い分け
佐藤さんが普段使っているのは、主に以下の3種類のカンナです。
①平鉋(ひらがんな)
・表面全体を平らに削るための基本のカンナ
・角を少し丸めたり、面取りをしたりするのにも使用
・大・中・小サイズあり、用途に応じて使い分け
【平鉋(ひらかんな) 替え刃式鉋・替え刃】http://shop-kawai.g.dgdg.jp/kaebakanna_hanbai.html
②際鉋(きわがんな)
・刃が端までついていて、角や細かい部分の削りに最適
・「右勝手」と「左勝手」があり、削る方向によって使い分け
・障子の「ほぞ」部分など、通常のカンナでは届かない場所にも対応
【際鉋(きわかんな)】http://www.iwood.jp/iwood/image/2012-d/18.jpg
③紙貼鉋(かみはりがんな)
・障子紙を貼る部分(紙じゃくり)専用のカンナ
・紙一枚分だけ削れるように、刃の幅も非常に狭い障子専用のカンナ
・2回ほど軽くかければ、紙の厚みにぴったり合う
【紙貼鉋(かみはりかんな)】https://store.shopping.yahoo.co.jp/jindaikohonpo/kakusyu-kanna-069.html?sc_i=shopping-pc-web-result-storesch-rsltlst-imghttps://store.shopping.yahoo.co.jp/jindaikohonpo/kakusyu-kanna-069.html?sc_i=shopping-pc-web-result-storesch-rsltlst-img
■カンナの構造と調整方法
どのカンナも基本的な構造は共通で、「刃(神刃)」と「裏金(押さえ刃)」の2枚構成です。
鉋身(かんなみ): 実際に木材を削る主刃
裏金: 鉋身をしっかり押さえる補助刃
調整は刃の出具合で行い、叩きながら微調整していきます。刃を出しすぎると厚く削れ、引っ込めると薄くなります。
近年では、刃を取り替えられる交換式のカンナも登場し、一般の方でも手軽に使えるようになりました。切れ味も良く、手入れが苦手な方にもおすすめです。
■実演!職人のカンナ削り
佐藤さんに、実際にカンナで木材を削る様子を見せていただきました。
①平鉋(ひらがんな)の削り方
・面をなだらかに整える用途に使用
・少し斜めに当てて引いていくのがコツ
・力加減を一定に保つことで美しく削れる
②際鉋(きわがんな)の削り方
・刃が端まであるので、隅まできれいに削れる
・障子の角や細部、ホゾの面取りなどに使用
③紙貼鉋(かみはりがんな)の削り方
・障子紙の貼り部分(紙じゃくり)削る。2回削ると紙1枚分の深さになるように調整されている。
※障子は、紙じゃくりに障子紙を貼ると障子本体と紙の表面が平らになる作りになっている
・他のカンナでは不可能な繊細な加工が可能。
■ まとめ:カンナは職人の“手の延長”
カンナは、見た目以上に繊細で調整が難しい道具です。しかし、その分、職人の技術がダイレクトに表れる道具でもあります。
障子を一枚仕上げるだけでも、こうした多彩な道具と技術が使われていることを知ると、ものづくりへの敬意が生まれますね。